ing
良品工房 | 会社案内 | いいものプロジェクト | モニター | ご提案 | 「いいもの」通信 | 考えるペ−ジ | リンク
考えるページ
「天然添加物」ってなんだろう?

『天然とは何だろう?』と考え始めると、さて、そもそも、添加物の「天然」とはナンなのだろうと、基本的な疑問に立ち至りました。
天然調味料、天然甘味料、天然保存料、天然着色料などなど、天然系と呼ばれるのは、高度経済成長の中で使用が増えつづけた合成添加物に対して、自然にある物から作られた天然由来の添加物を呼ぶときに使われたものです。



添加物が必要だった時代

日本で合成添加物が使用されるようになったのは明治時代。清酒に添加されたサリチル酸が第一号といわれ、一九〇〇年には「飲食物その他の物品取締に関する法律」というもので、有毒な食品添加物の使用が禁止されました。以後大正、昭和初期までは、「ネガティブリスト」、つまり、公表された「これは毒だから使っちゃダメよ」というリストに基づき取り締まる方式が取られてきました。戦後一九四七年に食品衛生法が制定され、今度は「ポジティブリスト」方式つまり、国が「使っても大丈夫よ」と判断してリストに載っけた物は使ってよろしい、という方式に変わりました。この太鼓判を押した食品添加物の顔ぶれを年代ごとに眺めて見ると、まずはじめ四八年に指定された六〇品目には保存料や殺菌料、着色料が多い事がわかります。戦後の食料難の時代、とりあえず食料の量の確保に必要な添加物を、国が安全性を試験しデータも公表して、使用については国が責任を負う事でメーカーに使ってもらい、食料不足をのりきろうとしたことをうかがわせます。以来、少しずつ国が指定する添加物の数は増えつづけます。

もう食べちゃったよ!

そして起こったのが、五五年の「森永ヒ素ミルク事件」。ミルクに添加された安定剤に、あのカレー事件に使われたほど毒性の強いヒ素が、間違って混入し、全国で十二万人が中毒を起こし一三〇人以上の乳幼児が亡くなる大事件が
発生したのです。当時は食品添加物の規格基準や定義が曖昧で、問題の添加物、リン酸水素ナトリウムの精製や使用に規制はなく、自由に作ったり使える状況の中で事件は起こりました。結果、これをきっかけに五七年に食品衛生法が改正され、それまで決められていなかった添加物の定義や規格が明確にされ、添加物は「食品の製造過程において又は食品の加工もしくは保存の目的で食品に混和、浸潤その他の方法によって使用するもの」と決められました。また同じく食品衛生法により、食品添加物に使用される化学的合成品とは「化学的手段により元素又は化合物に分解反応以外の化学反応を起こさせて得られた物」と定義されました。
そして、森永事件のように不純物の混入など、決められた規格基準に合わないものが製造されない様に、添加物ごとに指定された成分物質である事を確認する規格基準が決められ、添加物を使用する使用基準が決められ、国が各種の試験結果を基に「これはこの様に使えば、使って大丈夫」と判断した物が指定添加物とされました。ちなみに、この時点では、いわゆる天然添加物は食品に分類されていて、使うことに規制はありませんでした。さて、こうして法律で定義され各種基準が決まることで、それ以後、指定添加物の数は一挙に増え、六〇年代には三〇〇品目を越えてしまったのです。
六〇年代は日本の高度成長期の始まり、インスタントラーメン、魚肉ソーセージ、粉末ジュースなど、様々な加工食品が開発され、それとともに、指定される添加物も増えたのでした。開発や進歩が単純に礼賛された時代、添加物は食生活を豊かにする新商品を生み出す魔法の薬だったのです。
ある日、それまで国が安全を保証した添加物が、たっぷり使われてしまった後に「発癌性があるから」と、使用禁止にされるまでは…。

合成がダメなら、天然?

豆腐や魚肉ソーセージに使用された、AF2が殺菌料として指定されたのは六五年。そしてその発癌性が検証され、指定を取り消されたのは七四年。この間およそ一〇年、少なくとも私はたっぷり食べてしまいました。六九年には、粉末ジュースに甘味料として含まれていたチクロが発癌性により指定が取消されました。これも、しっかり飲んでいました。さらに、うどんなどに使われていた漂白剤の過酸化水素の発癌性が指摘され、イーストフードとして使われていた臭素酸カリウムがやはり発癌性を指摘されながら、厚生省は使用禁止処置を取らず、パン業界が自主的の使用禁止を決定するに及びました。国が安全性を試験し「使って大丈夫」と太鼓判を押してくれたはずの指定添加物の安全性にはすっかり信用が置けなくなってしまったわけです。でも、いちど使った魔法の粉の便利さはなかなか捨てられる物ではなく、皆が敬遠する様になった合成添加物の代わりに、天然系の添加物を使用する食品メーカーが現れたのです。
もともと自然に存在する動植物や鉱物からとった天然系の添加物は、自然にあったものだから安全と錯覚させられますが、人類に貢献するためにだけ存在するのでは無い天然には、もともと人に危害を及ぼす毒もあるわけです。過去たくさんの人が命がけで食べ続けた結果、人の食べ物となったものが食べ物の本質とすれば、害や問題があるからこそ食べ物として選択されなかった物が、合成添加物に変わる作用への期待だけで添加物として選択され、食卓に登場するケースもあるわけです
一九八八年、天然添加物の使用が増えすぎたため、厚生省は「化学合成品以外の食品添加物リスト」を公表し、一九九五年の食品衛生法改正の折には、天然添加物も合成の添加物同様に「指定制」の添加物になり、法律上は、天然系も合成系もどちらも同じ「添加物」という扱いになりました。
と、今回は、添加物の来し方をザックりおさらいという感じになりました。次回は添加物の行く末について考えることにしましょう。
                                      

この記事は2004年6月に発行した機関誌「いいものプロジェクト」第13号に掲載したものです。