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隠岐天然白島アラメ
隠岐天然白島アラメ




もっと隠岐のアラメを広げたい。
そうしたら隠岐で仕事ができる人間が
一人でも、二人でも増えるかもしれん。

■潮がはやい簡単に行けない。場所だから、おいしいアラメがとれる。

境港港から高速艇に乗り込んで一時間半。隠岐の島の西郷港に到着すると、武田浩志さんが手を振って出迎えてくれました。
武田さんの家はおじいさんの代から隠岐の島町のまちなかで「武田ストアー」という小さな食料品店を営んでいます。生鮮食品や調味料、洗剤などの日用品を取り扱い、島の人々の暮らしにはなくてはならないお店として、親しまれてきました。
アラメは隠岐では色々な場所でとることができますが、武田さんの販売するアラメは島の最北端の海、「国立公園隠岐白島沿岸」でとれたもの。漁師歴四〇年のベテランである大西寿夫さん(おじさん)、クニコさん(おばちゃん)夫妻、息子の寿春さんが朝早くから漁に出てとってきて、手間ひまかけて商品に加工したものです。
白島海岸の海は、潮がはやくて真冬は漁に出られる日は月のうち一週間もあればいいほうという荒海なのだそうですが、訪れた日は一一月としては珍しい凪の日。海の色は驚くほど透明で、底のほうまでず〜っと見渡すことができます。
そんな美しい海の中で、アラメは海底にしっかりと根をはり、太陽に向かって豊かな葉を広げていました。にょきっとはえた太い幹からは、生命力の強さを感じます。
大西のおじさんは「同じ海でも白島のアラメは違う。海が違えばもずくでも、魚でも味が違うんよ。海流が早いから、おいしいもんがとれる。今日はたまたま凪じゃけど、冬場はあのへんはしけがほとんどで、めったにいけないから価値がある。四〇年が言うんじゃから、間違いない」と話します。潮のはやい日など、白島の海に入ると、よほど力を入れてふんばっていないと簡単に体が流されてしまうのだそうです。

かなぎ漁 大西のおじさんとおばちゃん
かなぎ漁 
大西のおじさんとおばちゃん

■ 伝統の「かなぎ漁」は大西のおじさんだからなせる技。


大西のおじさんの漁は「かなぎ漁」といわれる、伝統の漁法です。「かなぎ」とは木製の箱めがねのこと。底がガラスになっており、これを使うと海中がよく見えます。「かなぎ」についている小さなゴムの部分を歯で噛んで位置を固定。右手にはアラメを刈る鎌を持ち、左手で舵を切って船を操ります。
あっという間にアラメで船がいっぱいになっていくので簡単そうに見えるのですが、この道四〇年の大西のおじさんだからこそなせる技。寿春さんはウェットスーツを着て海にもぐってアラメをとりますが、「おやじのやってるあれ、簡単そうに見えるけどすごく技術がいる。そういう技術がまだないけん、俺はもぐって近くまで行ってとってくるんですよ」と、寿春さん。
とれたばかりの新鮮なアラメはすぐに港の近くで天日干しにします。海からあげたばかりのアラメは深い緑色をしていますが、天気がいい日は一日で乾いて真っ黒に。が、これで完成ではありません。アラメは渋みが強い海藻であるため、商品にするにはここからが大変。まず、天日干ししたアラメを海岸から吊り下げて海水に漬け、渋みを出します。そのあと大西のおばちゃんが適当な大きさに切り、一晩じっくりかけて地下水で茹であげていくのです。
現在、アラメ漁をやっている家は、大西さんの住む集落ではわずか四軒。「アラメはとにかく手間がかかるから、みんなやりたがらんのよね」と大西のおばちゃんは話します。
最後に茹で上がったアラメをザルの上にあげ、潮風に吹かれながら再び乾燥させます。
こうして三人の共同作業で完成させた商品を五キロの袋に入れて武田さんのところに納品し、六〇グラム入りの袋に小分けにしたら出来上がりです。

武田浩志さんと息子さん
武田浩志さんと息子さん
■ アラメを知ることで、隠岐のことを知ってもらいたい。

さて、これだけの手間ひまをかけてつくられたアラメですが、隠岐では煮付けにして食べるくらいで、ほかの食べ方はほとんどされていません。もっとアラメを島外に広めていくための第一歩として、武田さんたちは「みんながえらんだいいもの」のモニタリングに応募することにしました。
この商品が島外の人たちに受け入れてもらえるだろうかという不安もあったといいますが、じつに80%近くの人が「買いたい」と答えたことで、武田さんの自信も深まりました。同時に、商品の特徴や調理の仕方をもっときちんと伝えるために、パッケージ等を改良する必要もあることもわかってきました。
「もっと隠岐のアラメを広げたい。そうしたら隠岐で仕事ができる人間が一人でも、二人でも増えるかもしれん。買ってくれて、喜んで食べてくれる人がいることで、つくるほうもやる気が出る。アラメを知ることで、少しでも隠岐のことを知ってもらえれば」と、武田さんも大西さんも口をそろえます。
隠岐の人口は減少の一途をたどっていて一方では厳しい現実もありますが、こういう気持ちの人たちがつくるものは、時間はかかっても買い手に心の伝わる商品に育つはず。そう確信して、ほっとあたたかな気持ちになったのでした。